新規開拓を成功させたい中小製造業の方が最初にすべきことは電話をかける、ではなく提案先である「購買部」のことをよく知ることです。
新規開拓は、新たな顧客との出会い、新たな利益をもたらすものであり、「1社依存状態から抜け出す」「複数の業界から安定した売り上げを作りたい」と考える中小製造業は時間を捻出して、既存業務の合間に取り組んでいることでしょう。
しかし、新規開拓がうまくいって、新規取引先との商売を始めることができた企業様はどれくらいいるでしょうか。
おそらく多くの企業様がなかなか新規開拓がうまくいかず、モチベーションがあがらず、新規開拓自体に億劫になっているのではないでしょうか。
中小製造業の新規開拓がうまくいかないのは「話が下手」「新規開拓の方法がわからない」ではなく、新規開拓の際の提案相手である「購買部」のことをよく知らないまま、新規開拓を行なっているからです。
「購買部」を理解しないままの新規開拓は好きな子の好みを調べずに闇雲に猛アタックしている男の子と一緒で、相手を理解しないままの新規開拓は絶対にターゲットに振り向いてもらうことができません。
しかし、「購買部」のことさえ理解すれば、以下のことがわかるようになります。
- 相手に何を質問すべきか
- 相手が何を欲しているのか
- 相手が何を求めているのか
この記事では中小製造業が新規開拓させるために必須である購買部の実態について解説します。
中小製造業は購買部を知らなすぎる
新規開拓に取り組んでいる企業様の中で「購買部」の実態やどんな課題を抱えているのかを知らずに電話や提案をしている企業が実に多いです。
日々、取引をする既存顧客の担当者様がどんなことに困っているのか、仕事はどんなふうに進めていて、経営層からどんなミッションを与えられているか理解していますか?
もしも、既存取引先の購買担当の課題や悩むがよくわかっていない場合は、まず「購買部を理解」することから始めましょう。
購買部の実態
購買部は必要になった部材を発注し、納期管理をすることが基本の業務ではありますが、既存調達の他に営業部からの特急品対応やサプライヤー管理、品質管理を物流管理を通常よりもはるかに少ない人数でこなしているのが実情です。
既存取引先で購買部と付き合いがあっても、普段の発注対応だけで購買部の中身やどんな状況なのかを話をする人は少ないのではないでしょうか。
多くの企業の購買部は部内人員が少なく、1人あたりが抱える仕事量が多い、慢性的な人不足になっている部署です。
人不足の理由は購買活動を行うには自社製品理解、サプライヤーとのやりとり、現場理解など長年の経験が必要な部署のため、新人が配属しにくい部署であるため、高齢化が進む一方で下から若い人材が入らないのです。
人が少ないにも関わらず、経営層から利益創出のコストダウンを要求され、サプライヤーはどんどん高齢化で廃業し、日々の製品を滞りなく調達し、営業部からの特急での調達依頼に対応しなければいけない苦労の多い部署なのです。
新規開拓をした際に「間に合っている」「今はいいです」と言われるのは落ち込むかと思いますが、購買部の実情を知ると少し納得ができるのではないでしょうか。
購買部が抱える悩み
購買部が抱える悩みは既存製品の調達作業、物流手配、納期管理、納品物の品質管理など既存業務があまりに忙しいことです。
人不足で1人の購買担当が抱える業務範囲があまりに広いため、与えられた部材を滞りなく調達することで精一杯なのに、横から営業部からの短納期製品の調達要望や手配に手間がかかる製品の調達など、本当に購買部の悩みは尽きないのです。
サプライヤー管理にしても、依頼して全く回答が来ないサプライヤーへの催促電話や価格交渉、納期遅延による代替手配など1つの調達をとっても購買部の負担がとても大きいのです。
1人の購買担当が扱う商材は10~50だけでは済まず、その数が100を超え、企業規模に比例して、扱う調達品は拡大します。
既存調達品を滞りなく調達し、営業からの短納期要望にも対応することで購買部は1日の時間の大半を使うのです。
新規サプライヤーを見つける余力がない
実は購買部は新規サプライヤーを開拓したいのですが、既存業務が多すぎて、その時間を捻出できずにいるのです。
テレアポの際に「新規サプライヤーに困っていない」と言われるから、サプライヤー求めていないのではと考えるかもしれませんが、それはその担当者が考えていないないしは本当に充足しているだけで、世の購買部の大半は新規サプライヤーを求めています。
世の中で人不足の声が強くなり、高齢化の波が進んでいるということは間違いなく既存サプライヤーの廃業が起こっており、年を追うごとにその数は拡大していくため、既存サプライヤーの廃業が出ない購買部はないはずです。
根拠として以下のURLのようにネット上に自社の調達したい製品や技術を掲載し、「オープン調達」の方法で全国からサプライヤーを募集するメーカーが増えているのが根拠になります。
購買部は日常業務が忙しすぎて、本来の価値ある仕事である原価低減に繋がる調達先、廃業先のサプライヤーに代わる新規サプライヤーを探し出す開拓作業をやりたくても、既存の仕事が忙しくて、手が回らない状態なのです。
購買部の問題解決が新規開拓の基本
新規開拓の基本は「相手の抱える課題を解決する」ことであり、相手のことを理解せずに一方的に営業をしていては「課題解決」に繋がらず、いつまでだっても振り向いてもらうことはできません。
ここでは中小製造業が新規開拓をする際の基本を解説します。
購買部の課題を知る
新規開拓をするためには購買部のどの課題を解決するのかの課題特定をする必要があります。
課題を知らずして新規開拓を成功させることは絶対に不可能です。
大事なことなので繰り返しますが、「新規開拓は相手の課題を知らないと絶対に成功しません」
よく新規開拓をしに行っても何を話せばいいかわからず、とりあえず何度も顔を出しているというのは裏を返せば「あなたの課題を知らないけどとにかく来ました」という存在でしかありません。
新規開拓をする前には必ず、相手の業界、製造する製品を調査して、購買部の課題を特定する必要があります。
自社が提供できる解決手段を探す
解決課題が見つかったなら、自社の技術、設備、優位性を用いて解決する手段を決める必要があります。
購買部の課題が見つかった後は、自社の技術や設備をどのように課題解決に繋がるかを探す必要があり、この解決手段で代表的なのは以下の3つです。
- コストダウン
- 納期短縮
- VE提案
更に噛み砕くと以下のような解決例があります。
デコトラなどのトラック架装を行うメーカー様では以下のような課題があり、解決に課題を抱えるケースが多く存在します。
ステンレス加工してくれる会社が関東になくて
関東から大阪に頼むのは運賃がかかる。。。
自社で研磨もできるような会社はないか
弊社はステンレス加工用のキズノンシートもあり
#400、#800も自社在庫があり
溶接後の研磨も自社で電解研磨まで対応可能です。
貴社から1時間圏内なので運賃もそこまでかかりません。
上記の例はトラック架装メーカーの購買部が抱える以下の課題に対して
- ステンレス加工をしてくれる加工会社が関東に存在しない
- 遠方に制作依頼するため、運賃が割高に
- 遠方への注文は納期も長くなる
自社の「材料在庫・立地、加工設備」の3つで以下の課題解決を提案した形です。
- 自社とメーカーの距離が1時間という立地のメリット
- バラでシート材料を購入せず、材料在庫の活用で材料コストとリードタイムを削減
- ステンレスのベンダー曲げ時にベンダー跡のつかないキズノンシートでの傷レス加工の技術メリット
課題さえわかれば、提案は難しくないのがお分かりいただけましたか。
コストダウンだけが価値ではない
中小製造業の新規開拓はコストダウンで安く作るだけが価値ではなく、リードタイムの短縮や高品質な製品を提供する他に営業担当のサービス部分である見積対応などもサプライヤーに提案すべき価値になります。
安さだけを購買部が求めているわけではないことを理解してください。
もちろん安く提供することは重要ですが、値段を下げて安く受注し、現場の残業だけ増えて、全く利益の残らない仕事は新規開拓の成果とは言えません。
そのため、「安く作れないから新規開拓がで成功しない」と言うのは言い訳です。
安くしないと取れないのは新規開拓側の提案に価値がないためであり、購買部が提案先の中小製造業の価値に魅力を感じていないのです。
コストダウンでなくても、以下のような提案も価値になり得ます。
- 既存サプライヤーよりも2日早く納品することができる
- SUS溶接品を美麗に水漏れなく仕上げることができる
- 曲げ加工から溶接、塗装まで一気通貫で納品できる
- 見積受領から1時間以内に見積回答ができる
- 材料在庫があるので、リードタイムがかからない
- 同じエリアに顧客がいるので混載納品で運搬コストを下げられる
コストダウン以外でもサプライヤーはいくらでも新規開拓先の購買部に価値を提供できるのです。
業界別の購買部が有する課題
購買部を理解するのが新規開拓で重要というのは理解したが、実際にどの業界でどんな悩みがあるのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
ここではトラック架装、電材業界の2つの業界の購買部が持つそれぞれの具体課題を解説します。
いずれの業界の新規開拓しやすい業界になりますので、ぜひ参考にしてください。
トラック架装業界
トラック架装業界の購買部はステンレス加工に関する課題が多く、特にトラックユーザーが求める「いかに綺麗に仕上がっているか」という仕上がりに関して大きな悩みを抱えています。
このトラック架装に関してはフェンダーやバンパーなどの外装に関する部分と骨組みなどのフレーム部分の本体側の大きく2つに分かれますが、特に購買部の悩みが多いのが外装部分です。
外装部分に関してトラックユーザーはいかに自分の車を「綺麗に飾るか」という部分を重要視しており、架装会社にステンレスで美麗に仕上げることを求めます。
しかし、架装会社の購買部からすると、ステンレス加工会社が減少していることに加え、自社で研磨する会社がほとんどないため、慢性的にステンレス加工に関しては課題を抱えています。
ステンレス加工先が減少しているため、既存サプライヤーの外注など複数の加工会社を通して仕入れるため購買コストが割高になっている点に加え、納期がかなり長くなるため、現場で部品待ちの車が溜まるなどの問題を有しています。
関東の架装会社の多くは関東圏内ではなく、大阪や東北から仕入れているような状況のため、以下のような企業はトラック架装業界への新規開拓をお勧めします。
- ステンレス加工が可能
- ステンレス関連の溶接が得意
- 電解研磨などの仕上げが自社対応できる
「トラック 架装」というキーワードで引っかかる企業が対象になりますので、ぜひ検討してみてください。
電材業界
電材業界は業界特有の要望であるメッキ・塗装までの一貫生産での短納期対応に対応できる企業を求めています。
短納期はどの業界でも存在する悩みですが、その中でも電材業界は価格よりも工事現場の工期という絶対的な流れがあり、見積対応から納品までの短納期対応ができる会社を強く求めています。
電材業界で利用される部材の大半は工事部材であり、購買部が1番困っているのは工事中に急に必要になった「小ロット短納期の部材」であり、製品は建物に取り付けられる都合上、サビ対策としてグレーの錆止め塗装やドブメッキなどの後処理対策が必須となります。
そのため、板金加工だけでなく塗装やメッキなどの後処理を踏まえた短納期の実現が必要です。
電材業界の購買部は「既存サプライヤーがレーザーを持っておらず、外注していて納期が遅い」「塗装やメッキの納期が遅い」などサプライヤーの設備不足や納期対応など割と解決が簡単な悩みを抱えているのです。
以下は、電材業界で受注できる製品の一例です。
- ブランクしてベンダーで曲げるだけの「固定金物」
- 6mm 50✖︎50のアングルを切断して長穴を開けるだけの「形鋼加工」
- アングルを溶接して仕上げは不要の「架台」
電材業界が求める部材はシンプルなものが多く、サプライヤーにとっては手離れの良い仕事が存在しますので、塗装やメッキまで社内で一貫して対応できる場合は新規開拓に打ってつけの業界です。
納期対応できるのであれば、価格は二の次として検討いただけるので、納期対応の手間が出ますが、通常取引よりも高利益な取引も実現可能です。
【まとめ】中小製造業の新規開拓は購買部を理解をすることが重要
この記事では購買部の実態を理解すれば、中小製造業の新規開拓は簡単に成功できる理由に関して解説してきました。
新規開拓に失敗するのは「話す内容が悪い」「うまく提案ができていない」からではなく、中小製造業が新規開拓相手である購買部をあまりにも理解できていないことが原因です。
製造業だけでなく、全ての業界において新規開拓の基本は「相手の問題を解決する」ことであり、問題を解決するためには相手がどんな悩みを持っているのかを相手の背景や仕事の仕方を踏まえて、事前に理解する必要があります。
相手のことを理解してさえいれば、「話し下手」であっても新規開拓は成功できます。
「新規開拓をしているけど、成果が出ない」「これから新規開拓を始める」このような状況の方はまず、提案先である購買部さんを理解することに時間を注いでください。
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